精製塩の功罪

精製塩とは、原塩や自然塩などに対して工業的に精製された塩をいい、
塩化ナトリウムの含有率が99.5%以上のものがほとんどを占めます。

最近では、ビリッとからい、コクやウマミがない、と味覚面で不評であり、
過剰摂取による健康被害を嫌気して敬遠する傾向すら見受けられます。

特に、弁当等を含めた外食産業では「しょっぱくて油っこい」ものが多く、
粗雑で貧相な料理の味をごまかす「悪の調味料」のように言われます。

専売塩・食塩・食卓塩などと呼ばれるものは日本ではすべて精製塩で、
塩の製造販売が自由化される前には、塩といえば精製塩を指しました。

では、なぜ精製塩が専売されていたのか、その理由を調べてみました。
もちろん工業的に精製すれば純度も高く、品質や生産量も安定します。

大切なのは、塩も食品なので衛生的でなければならないということです。
異物や有害物質を含まないのは当然ですが、問題はもう一つあります。

塩には殺菌作用がありますが、その原理は細胞の浸透圧の差であり、
好塩菌とよばれている微生物には細胞の構造上まったく通用しません。

菌を殺す毒があるのに塩が身体にいいわけがない、という人もいます。
毒とは何か、という議論は置いといて、塩で殺せない菌もいるのです。

海で働く漁師さんを悩ませる赤潮の原因菌のなかにも好塩菌はいるし、
海水を囲った天日塩田が美しい色に染まるのもコイツらのしわざです。

中には食中毒を引き起こすものもあり、一時話題になったO-157や、
腸炎ビブリオ、ブドウ球菌、病原性大腸菌、ボツリヌス菌などもそうです。

なので、天日塩をそのまま食べたり使うことを制限する国もあるそうで、
1971年の塩業近代化措置法による天日塩田全廃も苦渋の決断でした。

その当時「公衆便所に蒸留水を流せというのか」という批判が出ました。
誤解のないように書きますと、公衆便所とは玉石混淆という意味です。

生活に不可欠な塩を、一定の衛生水準を保ち一定の価格で供給する。
当たり前のことなのですが、近代化以前の日本では違っていたのです。

日本各地の塩試験場に持ち込まれる天然塩の品質が向上しないのも、
不合格の塩を再精製せず僻地で叩き売ったりするのも社会問題でした。

近年でこそ「ヤミ塩」という言葉は死後ですが、生活に欠かせない塩を
少しでも安く手に入れたいという切実さに付け込む悪人もいたようです。

中には、赤潮で食用にならなくなった濃縮海水を生産者から買い叩き、
漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)で脱色しそのまま煮詰めたりしたとか。

表と裏、メリットとデメリットは万事につきものですが、過去のことだけに、
塩業近代化措置法やそれ以前の取り締まりの是非は判断できません。

この歴史を悲劇という方もおられますし、戦争と関連づける人もいます。
ですが、オイラは正しい知識と夢を持った賢い消費者を目指したいです。