ご存知のとおりチェシャ猫とは、ルイス・キャロル作の「不思議の国のアリス」に
登場する、ニヤニヤ笑いを残したまま姿を消すという特技をもった猫のことです。
名前の由来は、イギリスの慣用句「チェシャーの猫の様にニヤニヤ笑う」ですが、
ルイス・キャロルの出身地でもある英チェシャー地方の猫はなぜ笑っているのか?
諸説ある中でポピュラーとされているのは、チェシャー地方は酪農がさかんで、
ミルクやチーズやクリーム、そしてそれを狙うネズミたちがいるからだそうです。
また、昔はチーズを固める型として、円形の端を直線で切った形の木枠を使い、
その形が「ニャオン」と開けた猫の口の形に似ているからだという説もあります。
チェシャーチーズは、チェダーチーズ・ダブルグロスターチーズとならび有名で、
イギリスでは最も古く、 ローマ帝国時代の本にもその名前が出てくるそうです。
さて、チーズを作る時に欠かせないのは何でしょうか?そのとおりです。塩です。
雑菌を殺し乳酸の発生を防ぐ役割のほかに、水分を取り風味を整えてくれます。
特に、欧米で普通に売られているヨウ素を添加した食塩や精製塩は不向きで、
良質でミネラル豊富な天然塩が、良いチーズを作るために欠かせないのです。
幸いなことにチェシャー地方には沼地が蒸発してできた岩塩の深い鉱山があり、
19世紀には近くのリバプール港からヨーロッパじゅうに輸出していたそうです。
よい塩あっての良いチーズが猫を笑わせる。なんとも不思議な話ではあります。