日本の神話(前編)

現存する日本最古の書物といわれる日本書紀の記述の中で、
皆さんもよくご存知の天地開闢(てんちかいびゃく)のくだりがあります。

伊奘諾尊(イザナギノミコト)とその妻である伊奘冉尊(イザナミノミコト)が、
天沼矛(アメノヌボコ)を天空の浮橋からさしおろして掻き回したという話です。

天沼矛で何を掻き混ぜたのか、一説によれば海水だと言われているそうで、
いちいち「書に曰はく」と断ったうえで諸説を紹介するにとどまっています。
また古事記では、矛先からしたたった塩(潮?)が陸地になったとあります。

なにしろ、そのあと二人はセキレイの真似をして初めてのセックスに及び、
島々のあとに海(うなはら)を生みます(巻第一神代上第五段四神出生章)。
ということは海水を掻き混ぜるという古事記の説は矛盾しますよね。。

さらに二人は神々を生み、火神である軻遇突智(カグツチ)を生みます。
この時にイザナミは焼け死んで、黄泉(ヨモツクニ)に入ってしまいます。

イザナミと、彼女を追ってヨモツクニにやってきたイザナギは、
膿が沸き虫がたかってしまった彼女の姿を見てしまいます。

「テメー遅えよ。もう手遅れだし。ってか見んじゃねーよ。」
「ウッセー。チョー醜いし汚いし。もうオレ帰るわ。」

 ヨモツクニを大岩で閉ざしたイザナギは海で穢れを濯ぐことにしました。

自らが作った海で穢れを濯ぐ、というのも妙といえば妙ですが、
海の水が死や腐乱と相対する位置付けであったことは間違いなさそうです。

左目を濯いで生まれたのが高天原をおさめる天照大神(アマテラスオオミカミ)、
鼻を洗って生まれたのが海原をおさめる素戔鳴尊(スサノヲノミコト)です。